ショートショート「脱出」

閉じ込められた。逃げられない。上も下も左も右も。どこにも逃げ道がない。1ミリの隙間すらない。
ずっと暗闇だった。熱かった。周りでは白い小粒たちが踊り狂っている。熱すぎる熱気をまといながら皆がそれぞれに激しく動く。その場に留まらずあらゆる方向に激しく、時に互いに衝突を繰り返し変形をもいとわずに乱舞している。狂気だ。あれは何なんだ。何が起きているんだ。
大音量の電子音が鳴り響いた後に光が差し込んだ。小粒たちは既に活動を終え、さっきまでのトランスが嘘のように動かない。横たわるもの、直立のもの、逆立ちのもの。
その異様な光景に目を取られているうちに閉じ込められてしまったのだ。
サランラップで包まれ凍えるような空間へと放り込まれた。やがて電磁波で目を覚ますのだろう。外から声が聞こえる。

おいしさを閉じ込めました。
おいしさを逃がしません。

酷い時代になったものだ。
いったい私のことを何だと思っているんだ。

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